九州大学青木研究室-理論化学グループ
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 ab initio CI/MP TS/TB相互作用解析法は、非経験的分子軌道計算レベルにおいて特定の分子内相互作用を定量的に解析するための方法であり、電子相関効果の考慮・励起状態の解析も可能である。 個々の軌道間相互作用と分子の全エネルギーの関係を知ることができるため、それぞれの相互作用が系の中でどのような役割をしているのかを定量的に評価することができる。
 本解析法は、基底関数の軌道指数を人為的に増大させることで軌道を収縮させ、分子内相互作用のカットを行う(図1)。 軌道の収縮によって軌道間の重なりによる相互作用がカットされるだけでなく、軌道が原子核上に点電荷を形成して核の正電荷を遮蔽するため、原子間の静電的相互作用も同時にカットされる。 それにより,核間反発,電子間反発,核-電子引力といった全エネルギーに寄与している各項のバランスを意識せずに自動的に相互作用がカットされる
図1     

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 本解析法の手順は次の通りである(図2).
  1. 通常の軌道指数をもつ基底関数、および軌道指数を人為的に増大させた基底関数を用いて各種AO積分を計算する.
  2. 原子軌道以外の基底で相互作用をカットしたい場合-例えば、結合単位で相互作用のカットを行いたいときなど-には、各種AO積分を混成軌道など用途に応じたベースに変換する。
  3. カットしたい相互作用に対応した各種積分の行列要素(積分の非対角要素)について、通常の基底関数で得たものと軌道指数を増大させた基底関数で得たものとを置き換える(この操作を"merging"と呼ぶ).
  4. merging後の新しい積分ファイルを用いて通常のSCF計算を行うことで、特定の相互作用をカットした状態における分子の電子状態が得られる.
  5. また、MP法やCI法との結合により、電子相関の効果を取り入れることができ、基底状態の分子だけでなく、励起状態にある分子についても分子内相互作用の解析が可能である。

図2     

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 積分の置き換え(merging)の仕方によって,解析対象に適切なカット方法を選ぶことができる。 図3に代表的な二つのカット法を示した。ここで、図1の原子核Aに属したχrと原子核Bに属したχs間の相互作用をカットすることを考える。
 Type-A (図3左)
・・・立体電子効果や共役効果など,電子の非局在化の効果を解析するためのカット. 積分の非対角要素のみをlarge exponentのものに置き換え,軌道の重なりによる相互作用をカットする.
 Type-B (図3右)
・・・回転障壁や立体反発など,核間反発も考慮する必要のある場合のカット. 積分の非対角項だけでなく,2中心2電子積分(rr|ss)および核-電子引力項の対角項VrrB,VssAもlarge exponentのものに置き換える.これらはそれぞれ古典的クーロン反発・クーロン引力の値に近づき、核間反発と打ち消しあうことで静電的相互作用も同時にカットされる.

図3     


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