九州大学青木研究室-理論化学グループ
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Reference
Elongation-Finite Field (FF) 法
-非線形光学材料の効率的理論設計法の開発-

●非線形光学現象とは?

●非線形光学の理論設計

●Elongation-FF法の開発

●Elongation-FF法の効率性、信頼性

●π共役系高分子への適用

●ブロックポリマーへの適用

●局所状態密度

●非線形光学現象とは?
物質に電場Eの光を入射すると、物質と光の相互作用によ り誘電分極Pが生じる。一般的にPとEの間には比例関係があるが、レーザー光の ように入射電場Eが極めて大きい場合、非線形項が効いてくるために比例関係が 崩れる。これにより、非線形光学現象と呼ばれるさまざまな現象が生じる。
●非線形光学材料の理論設計
どのようにして非線形光学材料を理論的に設計するのか? 実験で得られる非線形光学性を評価する物理量は非線形(電気)感受率である。一 方、それに対応する分子レベルでの物理量は分子超分極率であり、量子化学計算 によって得られる。個々の分子の分子超分極率が大きく、かつその分子がバルク系 において適切にパッキングされていれば、それに対応する巨視的な非線形 感受率も大きくなると考えられる。我々は量子化学計算を用いて微視的レベルの視点か ら非線形光学材料の理論設計を行っている。
●Elongation-FF法の開発
非線形光学材料は分子性結晶系と高分子系に大きく分かれ る。分子性結晶系は結晶構造によっても非線形光学性が大きく変化するので、1 個の分子、あるいは数個の分子のクラスターからバルクの非線形光学性を予測すること は困難である。一方、高分子系はオリゴマー鎖の伸長による振舞いから、ある程 度予測は可能である。そこで、高分子系の非線形光学材料を効率的に設計するた めに、本研究室で開発したランダム系高分子の理論的重合法 (Elongation法) に 対して分子超分極率を計算する方法の一つであるFinite Field法を組み込んだ Elongation-FF法を開発した。
●Elongation-FF法の信頼性、効率 性
本方法は、末端の置換基効果を効率的に調べられるとい う利点がある(下図)。出発クラスターに対して置換する一歩手前まで伸ばしてデータを保存し、 最後に種々の置換基を付加させる。これにより、置換基を変える度に最初から計 算する必要が無くなるので効率的に置換基効果を調べることができる。
次に全エネルギーと分子(超)分極率、α、β、γそれぞ れの誤差を示す。全エネルギーは極めて良い一致を示しており(<10-8%)、Elongation法による誤差は極めて小さい。一方、 分子(超)分極率の誤差は全エネルギーに比べるとかなり大きくなっている。これ は数値微分による誤差であり、Finite field法由来のものである。それでも、誤 差は1%以内に収まっており、Elongation-FF法の信頼性としては問題は無いといえる。
●π共役系高分子への適用
ドナー、アクセプターを置換させたπ共役系高分子は、理 論、実験の両面において2次の非線形光学性が増大することが示されている。我々 は、Poly-Para-phenyleneethynylene(下図)に対していろいろな位置でドナー、アクセ プターを置換させて高分子鎖を伸長し、βの鎖長に対する振舞いを調べた。鎖 の反対側にドナー、アクセプターをそれぞれ置換させた時にβが特に大きく増大 することを示した。
●ブロックポリマーへの適用
量子井戸構造(Band gapが大小交互になっている構造)を持 つことにより3次の非線形光学性が大きくなることが理論的に示されている。我々は、 モデル分子として量子井戸構造を持つポリヘテロール(下図a、pyrrole block-unitとsilole block-unitからなる)を用い、局所バ ンド構造(下図b,c)と3次の超分極率γ、Δγ(下図d,e)の関係を調べた。Band gapが小さいsilole block-unitの付加によりγがより大きく増大することが示さ れた。
●局所状態密度
ドナー(D)/アクセプター(A)置換ポリジアセチレン(D=NH2、A=NO2) に対して、Elongation-FF法を用いてπ共役鎖を伸長させ、置換基の位置と分子超分極率β、γの関係を調べたところ、ドナー部とアクセプター部が交互に並んだブロックポリマーPDA_DmAn が顕著なNLO特性を表すことがわかった。そこでPDA_DmAn (m=n=1~10)に対し、超分極率β、γのπ共役鎖の主軸(x軸とする)テンソル成分の値βxxx、γxxxxを各鎖長においてプロットした(下図左)。βxxxについては、基本的に量子井戸の大きさと連動して増幅している。しかしγxxxxについては、m=n=4のときに最大のγxxxxを与えた。Elongation法により、それぞれのブロック上の局所状態密度を計算すると、ドナー部とアクセプター部それぞれにおける最高占有軌道(HOMO)-最低非占有軌道(LUMO)間のギャップは5.3eVと同じでも、エネルギーの位置が交互に入れ替わる量子井戸型構造を示していることが確認できた(下図右)。  これは、ブロックポリマーにおいては局所バンド構造が交互に変化する量子井戸型を示すことにより他のブロック型以外の置換構造の場合に比べてγxxxxが大きくなり、しかも最大値のγxxxxを与える適当なブロックサイズがあることを示唆している。このような現象は、顕著な2次超分極率を与える材料を設計する上で興味深い。
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