九州大学青木研究室-理論化学グループ
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両性イオン分子にみられる
電子相関効果による超分極率βの増大問題

 図1に示した2つのDonor-σ-Acceptor型両性イオン分子は,スルーボンド的な相互作用が支配的なモデルである。 Finite Field法による超分極率βの計算によれば、HFレベルの計算に比べて電子相関の効果を考慮したMP2計算では、モデル1ではβ値が著しく増大し、一方モデル2ではβ値はほとんど変化しないことが報告されている
※Sanyasi Sitha, et. al. J. Phys. Chem. A, 105, 8727-8733 (2001).

 モデル1はN=C二重結合をもつため、π-σ相互作用がHFレベルで表現できていないことがその増大の理由として考えられるが,π-σ相互作用と電子相関効果の関係を定量的に確かめる方法が従来なく,今回TS/TB解析法を適用した。

図1     

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 議論を単純化させるため、まずはSTO-3GレベルにおいてTS/TB解析を行った. 相互作用のカットを行っていないFull interaction(図2左)では,モデル1では電子相関効果の考慮 (HF→MP2)によって大きくβ値が増大している。一方、モデル2では電子相関を考慮する前後でどちらも ほとんど値を持たない。 また、最高被占有軌道(HOMO)のみを考慮に入れたMP2計算[MP2(HOMO)]によっても同様の傾向が得られ,HOMOが重要な寄与をしていることがわかった。
 次にTS/TB法によるσ共役のカット(図1の点線で示した位置)を行うと、電子相関の考慮によるβ値の増大が抑えられることがわかった(図2右).
図2     

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 また,MP2計算の詳細を調べたところ,β値の増大にはHOMO-LUMO間の二次の摂動エネルギー項(式1)が重要であり、その分子積分部分に電場依存性を生じることが直接の原因であることが明らかになった. 結果の詳細は参考文献7を参照.
式1     


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