九州大学青木研究室-理論化学グループ
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NBMO法に基づく有機強磁性高分子の理論的設計法
~ 0-*結合ルール と Lij値 ~

0-*結合ルール
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 ラジカル分子を構成単位(ユニット)として高スピンネットワークを構築する場合,一体どのような指針でラジカル分子を結合させていけばスピンが整列した多重項が安定な高分子をつくることができるのだろうか?
 交互炭化水素系のNBMOにおいて軌道係数がある原子を星組原子(*)、無い原子を非星組原子(0)と表現する (図2).

図2   

 2つのラジカルユニットを結合させる方法としては、
  ・0-0の位置で結合させるDisjoint型
  ・0-*で結合させるNon-disjoint型
の2つのタイプを考えることができる (図3 上).どちらの結合様式からもユニット結合後に縮退したNBMOが得られる.その原理を図3下に模式的に示した.Disjoint型(0-0)では、互いに係数の無い部分が結合するので相互作用せずにNBMOは保存される.一方、Non-disjoint型(0-*)では結合部分に係数を持たないユニットのNBMOはそのまま保存されるが、係数を持つユニットの方は相手ユニットのNBMO以外の軌道と相互作用を起こす.ヒュッケル法の枠内では相互作用による安定化と不安定化が同じだけ起こり、その結果Non-disjoint型でもNBMOが保存される (→詳細はこちら)

図3   

 多重項が基底状態であるためには,系がスピン整列に働く交換相互作用(2Kij)を持つ必要があり、ここでは相互作用の結果NBMOが縮退しているNon-disjoint型(0-*)だけに交換相互作用が発生する. 別の言い方をすると、Non-disjoint型(0-*)ではπネットワークを介してNBMOが*→0方向へにじみ出ることができ、NBMOの重なりがラジカル間に交換相互作用を生み出す(2Kij>0)。一方、Disjoint型ではNBMOはそれぞれのラジカルユニット内に閉じ込められる.NBMOは互いに重ならず、交換相互作用も生まれない(2Kij=0).(図4参照) 
 0と*の位置でラジカルユニットを結合させることで多重項安定性を持たせるこのルールを0-*結合ルールと呼ぶ。

図4   

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