九州大学青木研究室-理論化学グループ
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NBMO法に基づく有機強磁性高分子の理論的設計法
~ 0-*結合ルール と Lij値 ~

多重項安定性の予測法(Lij値)
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 対象としている系が多重項安定性をもつかどうかを簡便に予測するため,スピン整列に働く交換相互作用Kij(交換積分:i,jはNBMOの番号)をMO係数だけから評価できるよう近似し、Lij値と定義した(図5)。
図5   

 Lij値はNBMO間の同じ原子上のMO係数の重なりに依存し、ユニット外へNBMOがにじみ出ることによって大きな値を持つ。交換積分Kijと比例関係にあるLij値はMO係数だけから算出されるため、単純ヒュッケル法などでも簡単に多重項安定性を見積もることができる
 例えば、アリルラジカル2分子モデルに対して計算を行うと(図6)、多重項安定性をΔET-S=E(Triplet)-E(Singlet)と定義したとき、Lij値の大きいNon-disjoint型ではHFおよびMP2の両レベルでΔET-SがDisdoint型に比べて大きく、単純ヒュッケル法でも多重項安定性を予想可能なことがわかる。
 電子相関効果は低重項を主に安定化させるため、HFからMP2へ変わるとΔET-Sの絶対値が小さくなっていることがわかる。したがって、HFレベルにおいてできるだけ多重項安定な分子をつくることが,電子相関考慮時にも多重項安定性を持つ分子の設計に結びつく.

図6   

【参考文献】 Y. Aoki, A. Imamura, Int. J. Quantum Chem., 74, 491(1999).
【特許】   特開平11-6825、科学技術振興機構、青木、今村「有機高分子化合物の強磁性を予測する方法」
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